販売が始まると、多くの初心者が最初に気になるのが価格である。
「競合より安くしなければ売れないのではないか」「価格を下げ続けなければBuy Boxは取れないのではないか」──そのように考えてしまう人も少なくない。
しかし、米国Amazonでは、価格だけが売上を左右するわけではない。
Buy Boxとは何か
米国Amazonでは、一つのASINコードに対して複数の販売者が出品していることが多い。
その商品ページで、「Add to Cart」「Buy Now」などの購入ボタンとともに表示される優先的な販売者枠がBuy Boxである。
現在、Amazonでは「Featured Offer」や「Offer Display」という表現が用いられることもあるが、ここでは分かりやすく「Buy Box」に統一する。
Buy Boxを獲得すると、購入者は特別な操作をすることなく、そのまま自分の商品を購入しやすくなる。
一方、Buy Boxを獲得していない場合は、「Other Sellers on Amazon」などの一覧から販売者を選んでもらう必要がある。そのため、一般的にはBuy Boxを獲得している方が販売機会は多くなる。
Buy Boxは価格だけでは決まらない
誤解されやすいのが、「一番安い価格なら必ず獲得できる」という考え方である。実際には、そのような単純な仕組みではない。
Amazonが公表している情報では、主に次のような要素が総合的に評価されるとされている。
- 商品価格と送料を含めた総額
- 配送速度や配送品質
- 在庫の有無
- 注文処理や顧客対応の実績
- 商品の状態
- 販売者アカウントの健全性
ただし、具体的な計算方法や各項目の配点は公開されていない。そのため、価格だけを変更してもBuy Boxを獲得できるとは限らない。
また、一度獲得したBuy Boxも、時間の経過や販売状況によって別の販売者へ切り替わる。「Buy Box獲得者が商品を売り切ってから次に回ってくる」という仕組みではない点も、あわせて認識しておいてほしい。
私が感じている傾向
ここから紹介する内容は、Amazonが公表しているルールではなく、私自身が販売を続ける中で感じている傾向である。
私の経験では、次のような状態を維持している商品は、比較的Buy Boxを獲得しやすい印象がある。
- FBAを利用している
- 極端に高い価格ではない
- 在庫が多めに納品されている
- 同じカテゴリーで継続的な販売実績がある
もちろん、これらを満たせば必ず獲得できるというわけではない。あくまでも日々販売を続ける中で感じている傾向として参考にしていただきたい。
自動価格改定を利用する
商品数が少ないうちは、価格を手作業で変更しても大きな負担にはならない。
しかし商品数が増えると、競合価格を毎日確認して一件ずつ変更することは現実的ではなくなる。
そこで活用したいのが、AmazonのAutomate Pricing(自動価格改定)である。競合価格や販売状況に応じて、あらかじめ設定したルールの範囲内で価格を自動的に変更できる。
最も重要なのは「下限価格」
自動価格改定を利用するとき、最も重要なのは下限価格である。
下限価格とは、「これ以上安く販売しない」と決める価格である。
この金額は感覚では決めず、利益が残る金額から逆算することが大切だ。次のような費用を考慮する。
- 商品の仕入価格
- 国際送料
- 関税(少し余裕を持った見積もり)
- Amazon手数料
- その他必要経費
- 最低限確保したい利益
これらを差し引いても利益が残る価格を、下限価格として設定する。
私は、下限価格は利益を守る最後の防波堤だと考えている。ここを誤ると、自動価格改定によって気付かないうちに赤字販売を続けてしまう可能性がある。
一方、上限価格は「これ以上高く販売しない」という価格である。初心者のうちは、下限価格ほど意識する必要はない。まずは利益を守ることを優先しよう。
値下げ競争へ参加しない
Automate Pricingでは、競合価格に対して、同じ価格にする、少し安くする、少し高くする、などのルールを設定できる。
ここで初心者に伝えたいのは、値下げ競争へ参加しないことである。
「最安値より常に1セント安くする」という設定は一見有利に見える。しかし、多くの販売者も同じような設定をしているため、値下げを繰り返すだけになりやすい。その結果、市場価格全体が下がり、利益まで失ってしまうこともある。
また、競合が値下げしても、自分の下限価格を下回るのであれば、無理に追随する必要はない。
利益を残して販売を続けることの方が、長い目で見ればはるかに重要である。
初心者が最初に見る3つの数字
価格管理で、初心者が毎日細かく確認する必要はない。まず見るべき数字は、次の三つだけで十分である。
- 現在の販売価格
- 自分が設定した下限価格
- 在庫の有無
Buy Box獲得率や、競合販売者の細かな価格変動まで毎日追い掛ける必要はない。
最初のうちは、「利益が残る価格で販売できているか」という視点を持つことが何より大切である。
次回は、売上・在庫・返品をどう見るか──日々の販売データの読み方について解説する。

