「カードが使えなくなりました」──深夜の相談から学ぶ資金管理

以前、事業を始めて4か月ほど経ったクライアントから、深夜に相談を受けた。

「カードが利用できなくなりました。明日仕入れをしたいのですが、決済が通りません。」

話を聞くと、売上が伸びる勢いに合わせて仕入れを増やした結果、カードの利用可能額いっぱいまで使っていたのである。そこへ追加の仕入れが重なり、決済できなくなってしまった。

私はまず、次の三つを伝えた。

  • その日の仕入れは見送ること
  • カード会社へ臨時増額を相談すること
  • Amazonからの入金日とカードの引落日を整理し、資金繰り表を作ること

結果として、数日後には利用可能額が増え、事業を継続することができた。もちろん、これは一つの事例であり、同じように増額されるとは限らない。

この出来事から改めて感じたのは、問題が起きてから慌てるのではなく、普段から利用額・利用可能額・引落予定額を確認しておくことの重要性である。

① 生活費と事業用を分ける

クレジットカードは、ポイントを獲得できるだけではなく、支払いのタイミングを調整できるため、資金を効率よく回しやすくなる便利な道具である。しかし、使い方を誤れば資金繰りを悪化させる原因にもなる。

まず最初におすすめしたいのが、生活費と事業用の支払いを分けることである。

同じカードで生活費と仕入れ代金を決済すると、何にいくら使ったのかが分かりにくくなる。帳簿作成も複雑になり、資金管理もしづらくなる。

仕入れ専用のカードや決済方法を一つ決め、事業のお金を分けて管理することをおすすめする。この習慣は、経費管理だけでなく、事業全体のお金の流れを把握するうえでも役立つ。

② 利用可能額は「仕入れ予算」ではない

初心者が誤解しやすいのが、利用可能額と仕入れ予算を同じように考えてしまうことである。

カードの利用可能額が100万円あるからといって、100万円まで仕入れてよいわけではない。カード会社が認めている利用可能額は、支払能力を保証する金額ではない。

実際の仕入れ予算は、次のような資金状況を基準に考える必要がある。

  • 手元にある現金
  • Amazonからの入金予定
  • カードの締日
  • カードの引落日
  • 商品が売れるまでの期間
  • 返品や販売遅延への備え

カードは、支払いを先延ばしにできる便利な仕組みである。しかし、支払いそのものがなくなるわけではない。この点を忘れないようにしたい。

③ 資金ショートを防ぐ

カード決済を利用する場合、最も避けたいのが資金ショートである。

商品を仕入れてから、実際に売上金を受け取るまでには、思った以上に時間がかかることがある。商品が届き、梱包し、米国へ発送し、FBA倉庫で受領され、販売され、Amazonから入金される。この流れには一定の日数が必要である。

そのため、カードの引落日が来ても支払えるだけの資金は、常に残しておきたい。私が意識しているのは、次の3点である。

  • 仕入れ前に引落日を確認する
  • 売れるまでの期間を楽観視しない
  • 必要なら仕入れを見送る判断を持つ

販売機会を一度逃すことよりも、カードの支払いが遅れる方が、事業への影響ははるかに大きい。

④ リボ払い・分割払い・キャッシングは可能な限り使わない

利益を出すことだけを考えるなら、高い手数料や金利が発生する支払い方法は避けたい。

リボ払い、分割払い、キャッシングなどは、便利に見えても、金利負担によって利益を大きく減らしてしまう可能性がある。

私自身は、仕入れは原則として一括払いできる範囲で行うようにしている。

利益を積み重ねるためには、売上を増やすことだけではなく、不要なコストを増やさないことも重要だからである。粗利益率10%を目安に仕入れている商品であれば、金利負担は利益をそのまま削ってしまう。

⑤ カード限度額は段階的に増やす

事業が成長すると、「仕入れたい商品があるのに利用可能額が足りない」という場面が出てくることがある。

しかし、最初から大きな限度額を用意する必要はない。販売実績と支払い実績を積み重ねながら、必要に応じて増やしていけば十分である。

方法としては、同じカードを継続利用する、支払いを遅れずに続ける、必要に応じて臨時増額を相談する、事業規模に合わせて上位カードや法人カードを検討する、といった選択肢がある。

もちろん、カード会社ごとに条件は異なるため、必ず希望どおりになるとは限らない。だからこそ、増額できることを前提に資金計画を立てないという姿勢が大切である。

カードは「限度額いっぱいまで使う道具」ではない

冒頭のクライアントは、結果的に事業を継続できた。しかし、増額が認められなければ、仕入れが止まり、在庫が切れ、販売実績にも影響していた可能性がある。

カードは、事業を成長させるための便利な道具である。だからこそ、限度額いっぱいまで使うことではなく、無理なく支払いを続けられる範囲で活用することを心掛けたい。

実際に仕入れを始める前に、使用する専用のクレジットカード、または決済方法を一つ決めよう。そして、利用可能額、締日、引落日を確認しておく。カードを利用しない場合も、仕入れに使う銀行口座や決済方法を決め、現在利用できる金額を把握しておくことが大切である。

次回は、売れた商品を切らさないための補充体制と、実店舗仕入れの位置付けについて解説する。

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