輸出しても自動では還付されない──課税事業者の届出と相談の準備

※ 筆者は税理士などの専門資格を保有していない。本記事の内容は実務経験に基づく一般的な考え方である。届出の要否や提出期限は事業の状況によって異なるため、必ず税理士または税務署へ確認してほしい。

商品を海外へ輸出したからといって、自動的に税務署から消費税の還付金が振り込まれるわけではない。

消費税還付を受けるためには、原則として課税事業者であることや、必要な届出、消費税の申告など、一定の手続きが関係する。

現在すでに課税事業者である人と、免税事業者である人では、必要となる手続きも異なる。

消費税課税事業者選択届出書とは

免税事業者が、自ら課税事業者になることを選択する場合に提出する届出の一つが、「消費税課税事業者選択届出書」である。

課税事業者となることで、課税仕入れ等に係る消費税額を控除し、条件を満たせば消費税還付を受けられる場合がある。

ただし、すべての事業者がこの届出書を提出するわけではない。

  • すでに課税事業者となっている
  • 別の制度によって課税事業者となる
  • 事業形態や開始時期が異なる

など、状況によって必要な手続きは変わる。

そのため、「輸出を始めるなら必ず提出する届出」と考えるのではなく、自分に必要な届出かどうかを確認することが重要である。

提出時期を間違えない

届出には提出期限がある。原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出することとされている。

たとえば、個人事業主の通常の課税期間は1月1日から12月31日である。翌年から適用を受けたい場合は、通常、前年中に提出する必要がある。

一方、事業を開始した課税期間から適用を受けられるケースなど、例外となる場合もある。また、法人の場合は、事業年度によって課税期間が異なる。

つまり、提出期限は、すべての事業者が同じではない。

そのため、「○月○日までに提出すれば大丈夫」という一つの基準だけで判断することは避けたい。事業開始日、法人設立日、最初の仕入日などが決まった時点で、税理士や税務署へ確認することをおすすめする。

一度選択すると制約もある

課税事業者を選択すると、一定期間は免税事業者へ戻れないなど、制度上の制約が設けられている。また、一定の固定資産を取得した場合などには、さらに異なる取扱いとなる場合もある。

途中で輸出を休止したり、国内販売の割合が増えたりしたとしても、すぐに元の状態へ戻せるとは限らない。

だからこそ、課税事業者になるかどうかは、消費税還付だけを見て判断するのではなく、今後の事業計画も踏まえて考える必要がある。

事業開始前に整理しておきたいこと

税理士や税務署へ相談するときは、次の内容を整理しておくと話がスムーズになる。

  • 個人事業主か法人か
  • 事業を始める予定日
  • 米国Amazonで販売を始める予定日
  • 初年度の仕入れ予定額
  • 初年度の売上見込み
  • 国内販売を行う予定があるか
  • 開業届や法人設立手続きを済ませているか
  • 現在、課税事業者か免税事業者か
  • 適格請求書発行事業者の登録状況
  • 過去に消費税関係の届出を提出したことがあるか

すべてを把握していなくても問題はない。「現在、自分が課税事業者か分からない」という状態であっても、そのまま相談すればよい。

重要なのは、制度を自分だけで判断することではなく、事業開始日や仕入れ開始日など、事実を正確に伝えることである。

最初にやるべきことは「相談する準備」

消費税還付というと、届出書や税額計算ばかりが気になりがちである。

しかし、最初に行うべきことは、制度を調べ続けることではない。自分の事業内容を整理し、専門家へ相談できる状態を作ることである。

インターネットで見つけた情報だけを参考に、自分で結論を出してしまうことは避けたい。事業形態や開始時期によって前提条件が異なるため、他人の事例がそのまま当てはまるとは限らないからである。

届出は「還付を受けるため」だけではない

消費税課税事業者選択届出書は、還付を受けるために注目されることが多い。

しかし実際には、今後どのような形で事業を運営していくかという、事業全体に関わる判断でもある。

そのため、「還付が受けられるから提出する」という単純な考え方ではなく、事業規模や資金計画、国内販売とのバランスなども踏まえて検討したい。

目先の還付額だけではなく、数年先まで見据えて判断することが大切である。

次回は、届出や申告以前に、事業を始めた初日から実践できること──請求書と輸出関係書類の保存について解説する。

error: Content is protected !!